殺〇事件(上)



データ

作者名 作品の分類 ページ数
山本幸生 小説 357

ISBN 書籍サイズ 定価(税込・円)
978-4-86420-205-3 A5 2,750





概要



本作には特定の「テーマ」というものは存在しない。 表題にある「事件」というもの自体も含め、全ては、我々の生きている現実世界というものを(より拡張された構造の中で)丸ごと抽象化し、その中で現れ得る「あらゆるもの」が互いにもつれ合いながら「明滅」していく、という「全体」そのものを描きたいというのが作者の創作「意図」である。

その「拡張された構造」というのは当然ながら現実そのもののそれではなく、ある意味それを包含するところの「仮想的上位構造」であるわけだから、本作において現れてくる様々なイメージを現実における事物・事象と直接的な形でリンクさせることは困難であろう。しかし私の意図は、そうしたイメージによって現実そのものについての思考を誘発することではなく、思考そのものを無理やり押し拡げることによって「現実」全体をトータルに「処理」し、そこをベースとして更に上方へ何物かを限りなく積み上げていくことである。

これは、結果的に「人間性」という土壌から遥かにかけ離れたところまで行く、という点においてもはや文学ではなく、またそれ自体においては「思考」が成立し得ないという点において哲学でもない。また、いかなる「超越者」も想定していない、ということから、それは「宗教」とも異質なものである。

あえて言うなら、それらの三要素を核融合炉で圧縮、融合させ、全く異なる「元素」として独自の振る舞いをするようになったもの、とでも言うべきで、少なくとも作者としてはそういうものを意識して作っている、ということを予め知っておいていただくと、むしろ多少は「分かりやすく」なるのではないか、と考えている次第である。

むろんこうした作者の「意図」などは無視して、各読者がそれぞれのイメージから何ものかを「読み取って」いくことは自由であり、むしろ作者としては、「意図せずして」そのような読み方が可能となっていれば、それこそが作品として「成功」した、ということを意味しているということも言えるだろう。

本作はぱっと見かなり「理屈っぽい」という印象を受けるかもしれないが、実は理屈や論理など「笑い飛ばして」いるというのがその本質だ、ということを最後に付け加えておきたい。論理の絶え間ない「転倒」の総体(というものを可能とする構造)というのが「感覚」で読み取れればそれで十分なのである。




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