ことのは






ニーチェ/作
つかみそこねた
手応えがあった

恋こがれ
溶けてしまうよな
温度かかえて
見えているのに
ほど遠い

まるで記憶のような
不確かな


とどかない、


手でつくった
輪の中に
やっと捕まえた

形をかえて
いとも たやすく
すりぬけた あなたを

見上げることしか
できぬ の でした


外は 虫たちの
演奏会

空の底

望月ゆき/作
かけおりた坂道のおわりには
ボーダー柄の、夏が
波のような顔をして
手をふっていた


それから、 と言ったあとの
あのひとの声が
ノイズにのまれて、ちらちらと
散ってしまったので
指先をすこしひたして
ていねいに
波のチューンを、あわせる


わたしたちに それから、があるとしたら
どこに続いているだろう
夏のはしっこをめくったら
見えるものは、なに
わたしはそれだけを知りたがったけれど
あのひとはただ
困った顔で笑った


風は方向性をおしえない
今はまだ、空の底


かけおりた坂道のおわりには
ボーダー柄の、夏が
手をふりながら
波のような周波数で
さようなら、を くりかえしていた


雲が、高いところを過ぎてゆく
空の底で
わたしは まぶしいくらいに子供だった


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