母なる愛の叫び




人の世の荒波に呑まれながら、私の人生も早還暦を過ぎて、更に数年を経てしまいました。私の子供は 三人おりますが、長男はサラリーマンとしてそこそこ遣っており、長女と次女はやはりそれぞれサラリ ーマンに嫁ぎ、何とか普通の生活を送っています。現代では、日本の国が経済的繁栄を謳歌してきた後 なので、当たり前の生活を送れることが当然となっております。しかし、戦時、戦後を生きてきた私と しては、我が子をそこまでにすることが、決してそんな易しいものであったとは思えません。現代の若 者が、自由奔放にそれが当たり前のごとく物質的繁栄を享受していること、そのこと自体を私も否定し ません。何故なら、そうなることを望んで、私たちは必死に頑張ってきたのですから。唯、そういう一 般的な事とは別に、私のこれまでの人生にはいろんなことが有り過ぎました。

此に至るまで、その過程に於て、子供たちも巻き添えにして、一緒に体験を積んで来たことも有るはず でしたが、子供たちの完全な理解を得るに至っていません。そのことは残念でなりません。理解されな いばかりでなく、誤解さえ受けている面があるようです。私はその誤解を晴らし、本当のところを理解 してもらいたい願望もあって、これから、自分の人生を語っていきたいと思っています。何しろ、私は 女としての当たり前の人生を送らせてもらえなかったのですから、その面で人の理解を得ることが難し くなっているのかも知れません。自分の人生ですから、自分の選択の仕方によっては別の人生が開けて いたかも知れません。しかし、私は、自分の心の自然から、子供を捨てて自分の人生のみを追求するこ とができませんでした。その結果が現在の自分となっています。でも私はこういう結果に満足していま す。少なくとも、子供たちが皆曲がることもなく、当たり前の大人として成長していること、それだけ でも、感謝致しております。

さて、これから私は、特に子供たちに伝えるつもりで自分の人生を語ろうとしています。しかし、いろ んな事件、出来事に溢れすぎていますので、今回全てを語り切ることはとても難しいと考えています。 従って、今回は特に朝田芳名と結婚した当時のことを中心にお話をしたいと思っています。芳名は子供 たちの父親であり、そもそも、私の人生は芳名との結婚を切っ掛けに、波乱万丈なものに運命づけられ たと言えますから、子供たちの父親に対する思いの如何に拘らず、芳名の若い頃がどんなものであった かを先ず私は語らざるを得ません。


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