人間のノート




自我は存在しないのに我執されている。我執は存在しないのに自我に囚われる。それは良くないことだ。魂は深淵で厳かだ。その仲間にあり、我執や我欲は信じられない。ともすると溺れがちだが、しかし、自然にあるのは常識である。ともすると、自然は人間に災いをもたらす。だから自然に寄り添い、自然の伊吹を感じるべきだ。自然の伊吹を感じてさえいれば、自然の中にある常識が理解される。この常識も自然の中にあり、自然の仲間である。魂の深淵だ。この魂の深みに接し、あたかも人はとりとめのない事情に囚われる。これこそ自我であり、欲望だ。つまり、我執に陥り、自分を出す。出すなと言われれば自分を出し、出さないというと自我に我執す。これこそ災いであり、困難だ。困難の解消にあり、我執とおぼしき人間である。我執は取り払わねばならない。それこそ本尊だ。

(『まえがき』より)



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