殺〇事件(下)




しかしあせっている≠ニいう言葉とは裏腹にそのアパート住人は大した動きを見せることもなく、話し終えた後も相変わらずぶら下がった上半身を激しく振動させながらアパートの壁をばんばん叩き続けているのでした(私はそれまでSRにしるし≠ェあるなどということは全く知らなかったので、やはり同じようにアパートの壁をばんばん叩きながらもこっそり隣でぶら下がっているアパート住人の方を盗み見ていきますが、少なくとも私にはその住人にしるし≠ェあるのかないのかよくわかりませんでした)。一方、部屋の中では依然として奇妙な踊りが続いているようであり、ばたばたというでたらめで不規則な足音や耳障りで甲高い意味不明なわめき声、そしてほとんど怒鳴り合いのケンカをしているとしか思えないようなちぐはぐな会話がひっきりなしに聞こえてきます(もちろん廊下や庭先においても有象無象≠スちの興奮は全く収まる気配もなく、それどころかまるで何かに取り憑かれてしまったかのように走ったり転がったりする速度をますます速めていくのでした。そしてそうしている間にも時々思い出したように半ドーム型集合住宅から小さな住人が転げ落ちてきて地面もしくは既に動かなくなってしまっている小さな住人の山に激突し、それ自身も動かなくなってしまうのでした)。



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