人魚伝説




特にない。が、しかし、得意になって言うべきものでもない。恋愛など、人間の基本作用だ。作法ばかりに目を奪われ、人間の在りのままの生活を忘れてしまったのか。それこそ良い迷惑だ。良薬は口に苦しというが、生活が苦しくて薬が買えない。探せば居る者だが、探したとて人間の力だ。人間に力が無ければ探しても無駄だ。人魚も一緒で、探したとて人間の力だ。海を守る怪獣かも知れない。漁師にしか見えない妖精かも知れない。人間に愛した償いは伺い知れ、あれは、アレだったとか、あれは只の魚だ。しかし、人魚はいる。人間の形をした魚類だ。人間の想像だから、いつ誰が居るかだが、人魚に澄ました兵の海は、嫌われまいとして必死に人魚に成済ました。人間の海では、こうだ。人間が居て暮らしがあり、人魚がいて蟠りを捨て、船酔いと思しき海を海中に捨てた。海は荒れ、暮らしの心配をし、暮らしは荒び、人間の心が取り沙汰された。人間の心では、こうだ。窓を開け、陰気を避け、陽気に唄い、長閑な木陰に蜘蛛が集まる。果たして、人間は蜘蛛の心で生き、人間と他の生物を見境い、野獣と結婚を夢見るのだろう。人間の夢では、こうだ。蜘蛛に化けた人間の生き様も、暫く、陰りが見えた。そこを付け狙って、新しい秩序を築こうとしている。新世界では、こうだ。野生があり、懐中し、懐中した中に結婚があり、人間の毛虫に見る芋虫も相手を探している。徘徊し、放浪し、相手を見付け、交尾し、交尾した暁には夜明けを待つのみだ。夜明け、つまり、白々しさは消え、新しいいのちと相俟って人間の絆にした。人間の絆が生まれ、欲望を控えた人間の縁が育まれ、育つ中で人間の心模様は如何にあるべきか。明かしてないと、人間の心模様は表せない。人間の心霊に見る欲望は、枯れず人間に襲い掛かる。古井戸に溜まった垢を汲み取り、生活に役立てる。



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