作者名 | 作品の分類 | ページ数 | 書籍サイズ | 定価(税込・円) |
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河清真実 | 小説 | 224 | A5 | 1,980 |
ISBN |
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978-4-901351-61-4 |
概要 |
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河清真実氏による第七作。 昭和40年代の半ば、経営数字を扱う事務処理の分野でも、コンピュータが主要な利器として使用される時代となっていた。大学を卒業してから3年、父親の経営する会社を飛び出してから2年、黒岩秀樹は、経理処理をベースにしたコンサルタント会社に勤務し、電算室に配属されてソフトウエア技術者として活躍していた。 秋が始まって間もない頃、黒岩は、コンピュータルームで、いつもと変わらずプログラムデバッグに打ち込んでいた。その黒岩の心に、突然、一つの感情が涌き起こった。それは、自分の周りのもの全てが、突然遠い世界に遠ざかってしまったような感覚を伴っていた。その感覚は、すぐに、今居る場所での自分の人生は既に終わった、という強い自意識と結びついた。黒岩は、自分のその強い自意識に忠実に従うかのように、その瞬間から心の中で転職を求めていた。 その日黒岩は、躊躇なく、一流商社に部長秘書として勤め始めた妹のコネを当たった。結果としては、一流商社の本社への転職は叶わなかった。その代わり、一流商社が始めるコンピュータ専門の新会社への参加の道が開かれた。 他方、現職を去るに際し、黒岩は、ソフトウエアの開発の仕事には二度と携われなくなることを覚悟した。その代償として、新しく導入されたばかりのコンピュータを、未練を残さないよう心行くまで使用した。退職願を出してから一ヶ月、最後の難しい仕事を成し遂げた。 ところが、黒岩の引止め策に成すすべを失った経営幹部は、一向に退職の許可を出してこなかった。やむなく、黒岩は、一つの舞台として退職を強引に演ずることを計画した。 心に変化を来たしてから3ヶ月、退職の目的に向かって突っ走りながらも、黒岩は、常に、何故自分が現職をやめたい気持ちを生じてしまったのか、その理由を追究し続けていた。ことある毎に、様々な理由が黒沢の意識の中を去来した。いずれもそれらしき理由に感じられた。しかし、最後に黒岩の意識を固定させたのは、一年前に現れ、黒岩と一時交差し、黒岩より一歩先に去っていった磯崎美絵子の存在であった。 |
目次 |
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時代を追う会社 突然の変心 面接 経歴説明 替わりの会社 歓送会を兼ねた会食 新組織の通知 新しい機械 退職願 上司の引き止め 部長からの呼び出し 親しき同僚の反応 経営幹部との初回の面談 帰郷 必死の説得 最後の仕事 手紙の準備 最後の投函 |