非線形力学入門(上巻)



データ

著者 翻訳者 作品の分類 ページ数
クリロフ&ボゴリューボフ 井口和基 物理学 118

書籍サイズ 定価(税込) ISBN
A5 2,200 978-4-86420-285-5




概要
蒸気機関からスマートフォンまで、あらゆる機械に組み込まれている制御機構。その解析と開発、そして発展の歴史において、多大な影響を与えた物理学史上の名著。N.クリロフとN.ボゴリューボフの共著。彼らの理論は、非線形系特有の諸現象について、その存在と特徴を明らかなものとしました。普遍的テーマの一つとして非線形力学が取り上げられている今日の物理学においても、彼らの理論は深い示唆をもたらしています。



本書第一部「非線形力学入門」の構成は以下のようなものである。第1章でさまざまな物理や工学などに現れる非線形方程式が紹介される。第2章で第一近似の基礎理論が展開される。第3章で第一近似をより精密化する方法が模索される。第4章で高次の近似理論が展開される。第5章で線形化の問題が考察される。第6章で線形化のための記号的手法が応用される。第7章で多重周期系が考察される。第8章で周期的な摂動の効果が議論される。最後の第9章で若干の補足が付け加えられた。

N.クリロフ博士については我が国ではあまり知名度はないのかも知れないが、この本とその後のもっと本格的な増補版の方で有名である。特に本書の基本となった平均化法にその名を残す。これがクリロフ-ボゴリューボフの平均化法である。

一方、N.ボゴリューボフ博士については理論物理学分野ではつとに有名で、ボゴリューボフ変換や超伝導のN. ボゴリューボフ理論や場の量子論などにその名を残す。だから、我が国の物理学会ではボゴリューボフ博士は偉大な理論物理学者としての足跡を残しているのかもしれない。それ以外の数学分野においてもいくつかの分野で偉大な業績を残した数学者であった。

しかしながら、本書が書かれた頃にはボゴリューボフ博士はまだティーンエイジャーの少年であった。当時ボゴリューボフ博士は旧ソ連時代で有名な早熟の天才だったようだ。当時アメリカには同じような早熟の天才ノーバート・ウィーナー博士がいた。だから、ボゴリューボフ博士は、いわばロシア人のノーバート・ウィーナーだったのかも知れない。その彼の指導教官が旧ソ連では有数の数学者クリロフ博士だった。

さて、この本の特徴は何か? これは非線形力学を摂動論的に解を構成する理論ということになろう。その最初の近似として「非線形方程式を振動解の1周期で平均する」という「平均化の方法」が提案された。本書にあるようにこの方法は非常に普遍的であり、多くの問題に応用され成功を収めた。

ところで、編者は本書の「非線形力学入門」を第一部とする。これに第二部「非線形力学の展開」が続く。続編では、本書の「非線形力学入門」の解説として、さまざまなテーマを紹介し、「非線形力学の展開」としてがまとめられる。1934年に現れたクリロフ-ボゴリューボフの理論は、その後さまざまの非線形分野でひな形として応用されたり発展させられたのである。こうしたさまざまの分野で考察されたより発展した現代的な話題の代表的なものをまとめるつもりである。続編は第二部と第三部に分かれる。第二部は「非線形振動の不安定化の記述」がテーマとなる。第三部は「非線形振動の不安定化の制御」がテーマとなる。このように、都合上、別冊の形で続刊を出版することをお知らせし、2冊に分冊した不便をお許し頂きたいと思う。

(『まえがき』より)

目次
まえがき

第I部 非線形力学入門

第1章 いくつかの非線型振動系

第2章 第一次近似の基礎理論

第3章 第一近似の精緻化

第4章 高次近似の構築

第5章 線形化

第6章 線形化に対する記号的手法の適用

第7章 多重周期系

第8章 周期的な擾乱の影響

第9章 補足

第10章 N.クリロフとN.ボゴリューボフの文献

索引




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