中東湾岸地域の金融システムと通貨統合



データ

著者・編者名 作品の分類 ページ数
金子寿太郎 財政・金融 378

書籍サイズ 定価(税込) ISBN
A5 3,850 978-4-86420-108-7




概要
経済・金融のクロスボーダー化、グローバル化に伴い、通貨統合の議論は中長期的に強まる傾向にある。本論は、湾岸協力会議(GCC)における通貨統合が国際金融における最適通貨圏の理論及び政治経済学的な観点から支持されているにも拘らず、その実現がなぜ阻害されているかを論じるものである。その分析においては、その主要な要因が経済・金融のいわばインフラ的な制度面にあるのではないかという仮説の下に、EUのユーロとの比較を通じて要因の検証を行い、そこから得られるインプリケーションを考察している。

目次
はじめに

序論
 1.背景および問題設定
 2.本書の目的および仮説
 3.構成および分析の前提

T.GCCの概要
 1.GCCの発足とガバナンス構造
 2.地域の政治・経済構造
    (1)歴史的背景および政治体制
      (@)歴史的背景
      (A)政治体制
    (2)経済構造および金融市場
      (@)GCC全体の実体経済
      (A)GCC全体の金融経済
    (3)加盟国間の政治・経済・金融等の関係
 3.GCCにおける通貨統合計画の沿革
    (1)域内における通貨の経緯
      (@)イスラム教普及以前
      (A)GCC域外諸国通貨の流通
      (B)GCC域内他国通貨の流通
      (C)今日の通貨の導入
    (2)域内貿易の自由化と関税同盟の発足
    (3)共通市場の発足
    (4)通貨同盟合意書の発効とそれ以降の進展

U.通貨統合等における先行研究およびEUとの比較
 1.通貨統合の理論的側面とGCCへの適用
    (1)通貨統合の定義
    (2)経済統合アプローチに基づく通貨統合
    (3)最適通貨圏の理論
    (4)通貨統合の便益と費用
      (@)便益
      (A)費用
 2.世界の通貨同盟と地域共同体・地域機構
    (1)現存する通貨同盟
    (2)通貨統合を予定している地域共同体・地域機構
    (3)その他の地域共同体・地域機構
 3.GCC通貨統合の制度的側面に関する先行研究
    (1)Fasano et al[2003]
    (2)Sturm and Siegfried[2005]
    (3)個別の制度分野に関する先行研究
 4.EUにおける通貨統合の経緯
 5.GCCとEUの間の協力関係
 6.GCCにおける収斂基準とその達成状況
    (1)公的債務残高
    (2)財政収支
    (3)インフレ率
    (4)短期金利
    (5)外貨準備高
 7.本書の分析の対象および手法(EUとの比較)

V.GCCの金融経済に関する情報収集・公表の枠組み
 1.GCCにおける統計制度の実態の検証
    (1)GCC加盟国の統計制度
      (@)現在の統計的枠組み
      (A)問題に対する取り組みの状況
    (2)共同体レベル(汎GCC)での統計制度
 2.EUとの比較分析
    (1)域内統計体制
    (2)域内統計ルール
 3.比較分析に基づくインプリケーションの考察
    (1)加盟国レベルでの対応
      (@)国際的ガイドラインへの一層の準拠
      (A)統計専門機関への業務集中
    (2)共同体レベルでの対応
      (@)域内統計ルールの策定
      (A)共同体統計機関の創設
 4.小括

W.共通通貨の為替相場制度
 1.GCCにおける為替相場制度の実態の検証
 2.EUとの比較分析
 3.比較分析に基づくインプリケーションの考察
    (1)固定相場制
      (@)米ドルペッグ
      (A)ユーロペッグ
      (B)カレンシー・バスケット
    (2)変動相場制
 4.小括

X.GCC中銀の枠組み
 1.GCCにおける中央銀行制度の実態の検証
    (1)各加盟国の中央銀行制度
    (2)GCC中銀の設立に向けた共同体レベルでの取り組み
 2.EUとの比較分析
 3.比較分析に基づくインプリケーションの考察
    (1)政策目標
    (2)独立性
    (3)透明性とアカウンタビリティ
 4.小括

Y.GCCの決済制度
 1.GCCにおける大口資金決済制度の実態の検証
    (1)GCC加盟国の大口資金決済制度
      (@)システム
      (A)ルール
    (2)汎GCC決済制度の歩み
 2.EUとの比較分析
    (1)システム
    (2)ルール
 3.比較分析に基づくインプリケーションの考察
    (1)汎GCC決済システムの創設
    (2)域内統一的決済ルールの策定
 4.小括

Z.GCCの銀行監督
 1.GCCにおける銀行監督の実態の検証
    (1)GCC加盟国の銀行監督
    (2)汎GCC銀行監督の歩み
 2.EUとの比較分析
    (1)加盟国レベルの監督体制
    (2)共同体レベル(汎EU)の監督体制
 3.比較分析に基づくインプリケーションの考察
    (1)加盟国レベルの監督制度の調整・標準化
      (@)事前的措置
      (A)事後的措置
    (2)共同体レベル(汎GCC)での監督体制の構築
      (@)加盟国間の関係
      (A)共同体機関の創設
 4.小括

結論

参考図表

引用・参考文献


著者紹介
金子寿太郎(かねこ・じゅたろう)
金融庁 国際室 海外展開推進調整官。
1997年日本銀行入行。国際局、フランクフルト事務所、国際金融情報センター(出向)等での勤務の後、金融庁国際証券市場決済調整官を経て、2013年より現職。早稲田大学法学部卒、独ケルン大法学修士(LL.M.)、早稲田大学学術博士(国際関係学)。


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