続日置の源流

- 備中足守藩吉田家弓術文書 -




はじめに

岡山大学弓道部OB会は、五十周年記念事業として『日置の源流』と題して備中足守藩吉田家弓術文書を翻刻出版した。ここで取り上げたのは原史料八十三点の内十一点であった。その後、逐次未読原書の翻刻を進め、史料を厳選し、ここに『続 日置の源流』として続編を出版の運びとなったものである。

今迄、日置流で唯授一人を受け日置流宗家を名乗り得る吉田家の文書が、そっくり世に出た事はない。先の『日置の源流』と、この『続 日置の源流』によって、備中足守藩吉田家弓術文書の全貌がおよそ明らかに出来たことは今後の弓道界に益するものと自負するものである。

この中には、弓に携わった先達たちの努力と叡智が、溢れんばかりに盛り込まれている。

岡山大学弓道部の初代師範である杉原範士は、常々「日置流六十ヶ條」には間違ったことは一ツもない。しかし、読む人の射業の範囲でしか理解できないものであると云っておられた。「伝書は人を選ぶ」というのは この事であろうか。よって、みなさんも愛読書として、是非何度も読み返して頂きたい。読者の修練に応じて読む度に新しい発見があるであろう。

神道の巻について

この備中足守藩吉田家弓術文書翻刻の最終に次の二点を掲載した。

      日置流神道一巻
      神道抄

「日置流神道一巻」は唯授一人、または免許皆伝の者に与えられるもので、「神道抄」はその解説・釈義書であり、一対をなすものである。

今迄公表された事の無い文書であり、まさに、まぼろしの書といってよかろう。「秘すれば華」と云うこともあり、翻刻を公表することには今でも戸惑いを感じる。しかし、足守藩吉田家が弓術宗家を名乗り得た根本の一書であることを考え、足守藩吉田家弓術文書全体の重みを表現する為に敢て掲載に踏み切ったものである。

奥書には、日置流中興の祖吉田一水軒印西と 岡山・足守両系の祖である吉田多兵衛良方の両者の花押がある。

明治の廃仏毀釈により神と仏が分別された我々にとっては奇異に感じられるが、神仏混交・本地垂迹の思想の下での文書であり、「神道」の名を冠しながらも、随所に梵語による真言や仏説の混入が見られる。

昔から「伝書は人を選ぶ」ということばがある。速読しただけで批判だけする人には伝書を読む資格はない。翻刻を担当した者として心して読んで頂くことを切望する次第である。

ともあれ、この二点は、もはや弓術の範囲を突き抜けて哲学の世界を展開しており、凡人の検討・批判の対象を超えていると思うので、これ以上の内容の論評は差し控えたい。

なお、梵字については笠岡市の真言宗大仙院住職 増井厚博氏(全日本弓道連盟 錬士六段)に御教授・御検討を賜った。その注釈を翻刻文の後ろに掲載する。記して御協力に感謝する次第であります。



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