WEB PAGE III




月蝕に祗園囃子の今滾つ


太虚を円くつくりて蟻地獄


白夜にて女に煙草教えけり


百姓の貌に溝ある旱かな


ひもじさも戦も知らぬ水着かな


稲妻にのつそりと蝦蟇光りけり


秋刀魚焼けば母在りし日の夕空なり


白皙のシスターの嗅ぐ冬薔薇


春陰やうつむき癖のある少女


千年の古都の十方冴返る


悲しい日金魚の水を替へてやる


春の闇をんなささめく耳の側


老人の正座美し竹の秋


蝸牛われは父亡き家を負ふ



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