「冬の暴君」 by 登り山泰至
冬は黙想している
冬とはこういうものだと
人間はあまりにも多く知りすぎた
だから冬のアイデンティティといったらない
今年こそはこの小さな島国にぶりざーどを降らせよう
いいやそれじゃあ生ぬるいさ
目標は大氷河期の再来さとほくそ笑みながら
冬の君主はハタと手を打つ
そうしたら冬空のどこか一点に陽気が差して
それでは人間が死に絶えてしまって
私たち三人はクビになってしまうと困ったような声が聞こえたもの
だから
冬はヒューヒュー不平面をした
季節たちはあれやこれや言い争うのは常のこと
賃金が25%増の残業時間を
何日間か増やすという案で可決した
毎年季節が少しずれ込むのは
人知れずこういうやり取りがあるからである
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