メンタルヘルスと表現の実践・知・展開



データ

著者 作品の分類 ページ数
杉本洋 社会学 207

書籍サイズ 定価(税込) ISBN
A5 2,640 978-4-86420-262-6




概要
本書は心の病いやひきこもりなどの経験を有している人びとによるパフォーマンス活動をフィールドに、いわゆる当事者による表現の実践と、そこにみられる技法や信念といった知、複数のグループの関係や歴史的経緯を見据えた活動の展開について記したものである。

生きづらさや心の病いを経験した個性ある人びとが集まり、自作詩、音楽、語りなどで表現するパフォーマンス活動には、そこにかかわる人びとの生き様や信念が散りばめられている。

メンタルヘルスにかかわる問題の解明・解消、問題との共存に向けては、単に症状を除去するのみならず、いかにして共感を得られるコミュニティーとつながるのか、そうしたコミュニティーを創るのか、いかにしてありたい姿に近づくのか、それ以前にいかにして固有のありたい姿を見直し、創っていくのかといった点が問われてくる。パフォーマンス活動は、それらの解明に近づくヒントを提示してくれる。

筆者は、本書で記述するいくつかの活動にかかわってきた。そして活動のある程度の期間(15年程度)にわたる変遷もみることのできる状況になってきた。メンタルヘルスに関連する問題が、特殊な人びとの個人的な問題という点を超えて、対人関係や組織の問題、社会の問題に通じるなか、特定の一時点における個人やグループについての記述に加え、当事者活動間、活動とその周囲・社会との関係、今後の展望を含めた記述を試みたい。

本書が、当事者活動の理解、メンタルヘルスにかかわる問題の解明・解消、問題との共存、人びとから学びながらともに構築する社会の展望を開くことに向けての貢献に少しでもなることを願う。

(『はじめに』より)



目次
はじめに

序章 本書の記述にあたって


第1部 表現の実践と当事者活動にみる知

 第1章 病気の表現活動における実践と知の記述に向けて

 第2章 表現する生存者の戦術的実践
     ―経験の深化と「正常」と「異常」の再構成―

 第3章 「生きづらさ」をパフォーマンスする人びとのつながりを形成する戦略
     ―共通性による共感と障害の価値転換を超えて―

 第4章 表現を通した「生きづらさ」の飼い慣らし
     ―「弱さ」を分析視点として―


第2部 表現活動の展開

 第5章 病気イベントにおける、「社会の縮図」の表現と「ゆるさ」によるつながり
     ―当事者と非当事者の共同と接続の観点から―

 第6章 関係性が切れることと築かれること
     ―メンタルヘルスにかかわる当事者活動における組織文化的課題への展望―

 第7章 歴史的変遷からみる当事者活動間のダイナミズムの理解に向けての展望

 第8章 当事者活動にみる多様性と創造性

 第9章 広がりをみせる病気イベントを通した無力からの生成
     ―豊かな「健康」観の構築に向けた検討―


終章 関係のなかで生成される表現

あとがき

引用文献


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