作者名 | 作品の分類 | ページ数 | 書籍サイズ | 定価(税込・円) |
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河清真実 | 小説 | 240 | A5 | 1,760円 |
ISBN |
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978-4-901351-24-9 |
概要 |
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これは、小説「アメリカの会社」の続編である。 「アメリカの会社」の時代から5年を経過しており、鷹島エレクトロニクスの山本も、ボストン郊外のブリッツベルグ社を訪問すること、既に数度に及んでいる。その間にブリッツベルグ社は、当時の社員が一人もいなくなり、全く別の会社に変貌していた。従って、1984年11月末のサンクスギビング休暇の最終日にボストン入りをした山本は、単身、敵地に乗り込んでいくような思いを抱いていた。 今回、山本の出張の目的は、日本のデータエントリ市場からの絶対的な要求となって来た『漢字データエントリ・システム』開発の打ち合わせを行い、引き続き、ブリッツベルグ・データエントリ・システムの最新ソフトであるDPEX−Vのカナ・バージョンを作成することであった。漢字データエントリ・システムの開発については、鷹島エレクトロニクスはブリッツベルグ社に2、3年前から要望を入れており、すでに概要仕様まで送りつけていたが、これまでブリッツベルグ社側から何のアクションも無いまま時間だけが経過していた。それが今回、ようやく鷹島の要求に応じ、ドイツ本社と香港支店も巻き込んだ会議を持つ運びとなった。ところが、ブリッツベルグ社側の検討の実情は、中国市場に進出したいドイツサイドの経営戦略が先行し、アメリカ技術サイドの詰めが甘いまま勇み足で会議が持たれてしまったのであった。そのことが、会議後にDPEXソフトの内容を実際に把握しているメンテナンス技術者から別の開発方法を提示されたことにより露呈してしまった。鷹島の要求もさることながら、ドイツの意向を重んじて漢字開発の提案書を書こうとしていたブリッツベルグの営業担当者は、アメリカ技術者の考えとドイツ本社の意向との間でジレンマを生じ、中々提案書を作成できない状態に追いやられてしまった。 他方、鷹島インターナショナル・エレクトロニクス現地法人の元社長・現副社長のマイク・ジェノアは、すでにブリッツベルグの開発力には見切りをつけ、彼独自の構想に基づき、別の漢字開発実現の方法を開拓する調査に山本を駆り出そうとしていた。そんな動きの中で、カナ版ソフトの作成作業は、DPEXシリーズのメンテナンス課において開始されていた。このメンテナンス課を運営するマネジャーのビル・クレビンが、組織の枠組みを越えDPEX−Vの開発部隊の中枢にまで関心を向け、その実情をよく把握し、開発部門長を真剣に補佐している姿が、山本にも次第に理解されて来た。その理解が進むに従い、山本のビル・クレビンに向ける感嘆の思いも高まって行った。 1984年の時代を背景にした、アメリカ・ハイテク会社をめぐる色とりどりな人間の姿が生き生きと甦ってくる。 |