作者名 | 作品の分類 | ページ数 | 書籍サイズ | 定価(税込・円) |
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河清真実 | 小説 | 288 | B6 | 2,200 |
ISBN |
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978-4-903447-07-0 |
概要 |
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河清真実氏による第九作。 大手商社鷹島商事の関連会社のIT系専門商社、鷹島エレクトロニクスに勤務する山本にも、偶にアメリカ以外の国に出張する機会が与えられることがあった。 1980年の初夏イギリスのベンチャーである、インスペクト・オートメーションを訪問する機会が与えられたのが、そのひとつであった。いろいろな状況が重なり、山本は、この時、一日だけロンドンからパリへ日帰りで飛ぶ冒険を挙行してしまい、パリの魅力を心に刻むことになった。その時、山本は、もう一度、パリに来てみたいと言う残念を残したまま、イギリスを十日間体験した。疲弊した状態に近かったイギリスでは、山本は、初めての国を飽くなく体験する中で、そこを憂鬱な国と見限り、そこから飛び出して行きたがっている市民がいることを知った。 その時から十年経った 。山本は、今度は、パリへ出張する機会を与えられた。その日程の中に、途中一日だけ日帰りでロンドンとの間を往復する予定も入っていた。再訪したロンドンは、くすんだままの都市であったが、そこには、素朴な人情が残っていた。これに対して、パリ訪問は、10年前に抱いた、もう一度パリに来てみたいと言う願望が期せずして叶えられたようなものであったけれども、しかし、そのパリは、10年前と違い、多量に日本人が訪問し、日本人を狙うこそ泥の蔓延する都市となっていた。歴史的建造物は、依然、繁栄した跡を残していたが、山本は、もはや、そこに、10年前に見た輝けるものを感ずることが出来なくなっていた。その絢爛豪華さ故に心の底から感動を呼び起こしたディナーショーを観劇した翌日、山本は、ド・ゴール空港に向かう帰国の途上、燻った赤レンガの古い住居の大群を発見した。山本は、それを、パリの本質を物語るものと感じ取った。それは、豪華な歴史的建造物も、現代の粋を駆使したスカイスクレーパーも、綻び行く遺産の仇花に過ぎないと感じさせる程の強烈な力を持っていた。それは、恋の魔力から脱せしめる目覚めにも似たものであった。 |
目次 |
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憂鬱なる草原の国 パリの一日 避暑地ボーンマス 草原の中のドライブ 憂鬱なる国 綻び始めた遺産 フランス出張前の背景 仏入国直後のハプニング メトロでの二つの出来事 辿り着けなかったルーブル パリの美味なるすき焼 副都心の会社訪問 オペラ劇場街での一時 親切なる田舎ロンドン 再び会社訪問 ルーブルへの再挑戦 絢爛豪華なディナーショー 最後のパリ観光 綻び始めた遺産の陰に |